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自治体や企業の防災対策|8つの取り組み事例

大規模な自然災害が増加する中、企業や組織における防災対策の重要性が高まっています。災害はいつ発生するか予測できないため、できる対策から早急に取り組むことが重要です。

本記事では、自治体や企業の実践的な取り組み事例と、11項目の具体的な防災対策を解説します。事業継続計画(BCP)に必要となる環境の整備や、災害時の従業員対応、地域との連携まで、実践的な防災対策のポイントも見ていきましょう。

自治体や企業における防災対策8つの取り組み事例

近年、地震や豪雨などによる大規模災害が頻発する中、自治体や企業による先進的な防災対策の取り組みが注目されています。自治体や企業における防災対策8つの取り組み事例として、以下の事例をご紹介いたします。

これらの自治体や企業が実際に行っている防災対策の取り組み事例について、「どのような防災対策を行ったか」「具体的な進め方」「取り組みのポイント」の観点で見ていきましょう。

オフィスビルの事例|大規模災害を想定した避難訓練の継続実施(プルデンシャル生命保険株式会社)

プルデンシャル生命保険は、平成23年から大規模災害対応の模擬訓練を継続的に実施しています。これまでに66回、1,540名以上が参加し、各拠点・部署に配置された防災推進担当を中心に、自主的な防災活動を展開してきました。

特徴的なのは、「BC(Plan から Practice)」という考えのもと、シナリオを事前に提示しない実践的な訓練を採用していること。災害対応手順やツール類を実際に使用しながら、参加者が当事者意識を持って対応できる完全参加型の訓練を行っています。

さらに、本社ビルでは1泊2日の帰宅困難者対応訓練も実施。机上の計画に留まらない実践的な防災体制の構築を目指し、継続的な取り組みを進めています。これにより、実際の災害時に必要となる危機対応能力の向上を図っています。

〈参考:内閣官房|初動体制の構築

販売店舗の事例|地域防災のリーダー役となるためのインフラ整備(株式会社フジ)

株式会社フジは、四国4県・広島県・山口県に95店舗を展開する小売チェーンとして、地域の防災拠点となることを目指した取り組みを進めています。南海トラフ地震への備えとして、平成24年にBCPを策定し、具体的な防災体制を構築しました。

特徴的な取り組みとして、各店の店長と本部マネジャーに防災士の資格取得を義務付け。また、設備面では災害対応型カップ自販機の導入、浸水対策用の止水シート配備、減災型ソーラーパネルの設置など、実践的な対策を講じています。

さらに、地域や行政と連携した防災訓練やイベントを定期的に実施。従業員には防災ハンドブックを配布し、緊急時対応マニュアルの携帯を義務付けるなど、防災意識の向上を図っています。これらの取り組みにより、災害発生時には地域のライフラインとしての機能維持と、防災活動のリーダー的役割を担うことを目指しています。

〈参考:国土交通省中部地方整備局|危機管理行動計画(第四版)

老人ホームの事例|大雨被害を想定した避難計画の策定(社会福祉法人大仙ふくし会 特別養護老人ホーム愛幸園)

愛幸園は、一級河川雄物川に近接する立地条件と、重度介護者が多い入居者の特性を考慮し、洪水時の避難確保計画を策定しました。避難先として、高台に位置する約1km先の市立平和中学校を選定。福祉車両での移動が可能な距離や避難経路の安全性を実地で確認し、計画に反映しています。

この計画は、実際に平成29年7月の記録的豪雨で実践されました。河川の水位が基準に達した際に、職員約40人が福祉車両7台を使用して入所者81名全員を安全に避難させることに成功しています。日頃からの避難訓練と、地域や関係機関との連携が、円滑な避難の実現につながりました。

また、周辺地域の自治会や事業所との防災学習会も定期的に開催し、地域全体での防災意識の向上と支援体制の構築を進めています。

〈参考:内閣官房|453 大雨被害経験を踏まえた老人ホームの避難計画の策定

病院の事例|災害拠点病院として平常時以上の稼働が可能な設備を整備(日本赤十字社足利赤十字病院)

足利赤十字病院は、災害時の被災者受け入れに備え、通常のBCPを発展させたMCP(Medical Continuity Plan)に基づく設備整備を行っています。設備面では、非常用発電機と井水ろ過システムを導入し、災害発生時でも病院全体を5日間程度運営できる体制を整えました。300名収容可能な講堂の壁面に医療ガスや医療コンセントを配置し、感染空調にも対応。建物は免震構造を採用し、真空式スプリンクラーにより耐火性能を確保しています。

さらに、井水熱や太陽光・風力発電などの自然エネルギーを活用し、蓄熱システムによる電力負荷平準化を実現。平常時は省エネルギー運用を行いながら、災害時には被災者受け入れのため通常以上の医療体制を維持できる災害拠点病院として、高い機能性を備えています。

〈参考:足利赤十字病院|施設の特徴 災害拠点病院の責務を担う「災害に強い病院」

銀行の事例|自家発電・非常用発電機の設備導入(株式会社滋賀銀行)

滋賀銀行の栗東支店では、災害時の業務継続を確実にするため、複数の電力確保手段を導入しています。主力となる太陽光発電システムは、停電時でも日中の業務継続を可能にし、顧客への金融サービスを途切れさせない役割を担っています。

さらに、夜間や太陽光発電が使用できない状況に備えて非常用発電機も設置。この二段構えの電力確保体制により、災害発生時でも安定した銀行業務の継続が可能となっています。

この取り組みは、自然エネルギーと従来型の非常用電源を組み合わせることで、災害に強い銀行施設を実現した事例です。電力供給手段の多重化により、様々な災害のシナリオに対応できる体制を整えています。

〈参考:滋賀銀行|安心してお取引いただくために

銀行の事例|業務継続体制の強化として「非常事態対策室」を常設(株式会社静岡銀行)

静岡銀行は、本部タワー内に「非常事態対策室」を常設し、災害時の業務継続体制を強化しました。この対策室には27面マルチディスプレイとテレビ会議システムを配備し、本部と全171店舗を結ぶ通信体制を確立。約5,400台の防犯カメラを活用して、迅速な情報収集と店舗への指示が可能となっています。

防災対策のソフト面では、全店舗での緊急要員の配置を行うとともに、年2回のグループ会社を含めた防災訓練を実施。この訓練内容には、預金手払いや為替送信など実務に即した内容に加えて、津波避難訓練も含まれています。

また、本部タワーには自家発電設備を備え、対策室には複数の通信手段を用意することで、大規模停電や災害時でも銀行機能を維持できる体制を構築。これにより、災害発生時における地域住民の預金引き出しや送金にも対応し、地域経済の早期復旧への貢献を目指しています。

〈参考:静岡銀行|災害への備え

自治体の事例|自宅困難者を想定した安否確認訓練(東京都|東京商工会議所)

東京商工会議所は、23区内の会員企業を対象に「家族との安否確認訓練」を実施しています。この取り組みは、大規模災害時の帰宅困難者発生を想定し、従業員と家族の安否確認手段を確立することが目的です。

訓練は毎年9月の防災週間中に実施され、災害用伝言ダイヤル(171)やJ-anpi(現在はサービス終了)など、複数の安否確認ツールを実際に体験する形です。参加者は各家庭・職場で個別に訓練を実施できる形式を採用し、参加のハードルを下げる工夫がされています。

さらに、初めて防災対策に取り組む企業向けに「家族との安否確認ガイド」を作成・配布し、具体的な手順を示すことで、より実践的な訓練となるよう配慮されています。これまでの累計で1,356社、約12万7千人の従業員とその家族が参加する大規模な取り組みへと発展しました。

訓練後のアンケートでは、7割以上の企業が今後も安否確認手段の周知を継続すると回答しており、企業の防災意識向上に大きな効果を上げています。

〈参考:東京商工会議所|家族との安否確認訓練を実施しました

自治体の事例|救出・救護・避難物資の整備(宮城県丸森町|舘矢間地区協議会)

舘矢間地区二区中自主防災会は、地域の防災力を強化するため、計画的に防災資機材を整備・管理しています。特に、東日本大震災時に地域一帯が停電し、在宅酸素療法を必要とする住民への対応に苦慮した経験から、発電機を常備することとなりました。これは災害時の医療機器使用に不可欠な設備として重要な役割を果たしています。

防災資機材の調達では、県の助成制度や共同募金会の支援を活用し、発電機の他、テントやアシストストレッチャー、車椅子なども配備しました。さらに、地元企業などの支援により、ヘルメットや配食用具なども確保しています。

維持管理面では、年1回の防災訓練時に資機材の点検を実施し、発電機の動作確認や投光器の点灯確認を定期的に行っています。また、防災倉庫内の資機材をリスト化して保管場所を明確にし、地元建設業3社、飲食業1社との災害協定も結び、より充実した防災体制を整えています。

〈参考:みやぎ地域防災のアイディア集|防災資機材の整備

防災対策で実施すべき取り組みまとめ

災害対策

企業における防災対策は、人命保護を最優先としながら、事業継続性の確保も重要な課題となります。すべての企業や組織が防災対策で実施すべき取り組みとして、以下11つの防災対策が挙げられます。

  1. 避難経路の確保と整理整頓
  2. IT機器の保護とデータ管理
  3. オフィス設備の転倒防止
  4. 非常用備蓄品の確保
  5. 防火・消火体制の整備
  6. 緊急時の役割分担
  7. 情報伝達システムの構築
  8. 防災教育・訓練の実施
  9. 帰宅困難者への対応
  10. 安否確認の仕組み作り
  11. 地域との連携強化

これらについて、なぜ対策が必要なのかといった理由や具体的な対応策を、詳しく見ていきましょう。

1.避難経路の確保と整理整頓

避難経路の確保と整理整頓は、自然災害などの際に逃げ遅れを出さないために重要な施策です。避難経路には最低2方向の選択肢を確保し、各経路は120cm以上の有効幅を維持しましょう。経路上には物を置かない「置き去り禁止ゾーン」を設定し、床面にテープで経路を示すことも効果的です。

また、停電時の避難を想定し、足元灯の配置や蓄光テープによる誘導表示、懐中電灯の各所配備なども行いましょう。定期的な経路確認と訓練を欠かさないことで、実際の災害時も慌てずに対応できるようになります。

2.IT機器の保護とデータ管理

業務データの喪失は事業継続に重大な影響を与えるため、クラウドバックアップと物理的な外部保管の二重対策を実施しましょう。PCやサーバーは専用のベルトや耐震ゲルで固定し、電源の二重化や無停電電源装置(UPS)の導入も必要です。

また、重要データは暗号化して日次でバックアップを行い、月次で遠隔地に保管するなど、具体的な運用ルールの設定も大切です。

3.オフィス設備の転倒防止

オフィスの棚や大型の業務用コピー機などが避難経路を塞いでしまうと、迅速な避難は実現できません。棚などは上下を金具で壁に固定、コピー機などの重量物の下には免震装置を配置、ガラスパーティションには飛散防止フィルムを施工するなど、オフィス設備の転倒防止対策を行いましょう。

特に高層階では、長周期地震動対策として、より強固な固定方法や免震装置の導入が効果的です。大型の設備の配置自体も、避難経路を確保した設計で行えるようにしましょう。

4.非常用備蓄品の確保

これまで日本で起きた災害などを振り返ると、非常用備蓄品の確保は命をつなぐ大切な準備になると言っても過言ではありません。3日分以上の備蓄を基本とし、飲料水は1人1日3L、食料は1日3食分を確保しましょう。アレルギー対応食も考慮し、非常食は賞味期限の異なる複数種類を準備することも大切です。

これに加えて、救助用具(バール、ジャッキ等)、救急用品(AED含む)、携帯トイレ(1人1日5回分)なども必要となります。保管場所は分散して配置し、定期的な棚卸と更新管理を徹底的に行いましょう。

また、過去の災害では、停電により電力の確保が難しかったことも大きな問題に挙げられていました。太陽光発電蓄電池システム、電源と灯りをセットで確保できる防災タワーなどといった電力に関する備えも重要です。

5.防火・消火体制の整備

オフィスの火災は、地震後の電気火災や危険物の漏洩による二次災害のリスクも高く、適切な防火・消火体制の整備が不可欠です。事業所では、消防法に基づく自衛消防組織を編成し、消火器を床面積50㎡ごとに1本以上配置します。加えて、屋内消火栓やスプリンクラー設備なども導入が必要です。

これらの設備を効果的に活用するため、定期的な点検と訓練を実施しましょう。特に初期消火は3分が限界とされており、この時間内に確実に対応できるよう、実践的な消火訓練を行うことが重要となります。また、夜間や休日など人員が少ない時間帯でも対応できるよう、全従業員が消火設備の使用方法を習得する必要があるでしょう。

6.緊急時の役割分担

災害発生時には迅速な初動対応が人命を左右するため、明確な役割分担と指揮系統の確立が不可欠です。災害対策本部を中心に、情報収集、救護、避難誘導などの機能別チームを編成し、各班のリーダーと代理者を事前に指名などを行う必要があるでしょう。

特に重要な対応手順は「災害対応カード」としてまとめ各自が携帯することで、混乱時でも確実な行動を取れるようにします。また、夜間・休日の発災に備え、会社近隣在住の従業員による初動対応チームを組織する、月1回の防災会議で役割分担を見直し、人事異動などに応じて柔軟に体制を更新するなど、災害時に確実に稼働できるようにしましょう。

7.情報伝達システムの構築

災害時は通常の通信インフラが使用できなくなる可能性が高く、社員の安否確認や被害状況の把握、適切な指示の伝達が困難になります。東日本大震災の教訓からも、複数の通信手段を確保することが重要とされています。

具体的な対策として、衛星電話やトランシーバーといった災害時優先電話の導入や、停電時でも使用可能な手回し充電式ラジオ・防災情報を確認できるタブレット端末を、各フロアへ配備することなどが挙げられます。さらに、月1回の通信訓練で全従業員が機器の使用方法を習得し、災害対策本部との確実な情報伝達体制を整えていくことも大切です。

8.防災教育・訓練の実施

災害発生時には、マニュアル通りの対応が困難な状況が多く発生するため、従業員一人ひとりの防災意識と実践的な対応力が重要になります。また、人事異動や組織変更に伴い、防災体制の実効性が低下するリスクもあります。

そのため、階層別の防災教育プログラムを整備し、新入社員研修では基本動作、管理職研修では指揮統制など、役割に応じた教育を実施しましょう。訓練では、実際の避難・消火・救助に加え、様々な災害シナリオに基づく図上訓練も取り入れる、外部の防災専門家による定期的な講習会で、最新の防災知識を学ぶなど、実践力の向上を図ることが大切です。

9.帰宅困難者への対応

大規模災害時は公共交通機関が停止し、特に20km圏外からの通勤者は帰宅困難となります。東日本大震災では首都圏で約515万人の帰宅困難者が発生したと推計されました。そのことから、二次災害を防ぐため、一斉帰宅の抑制が重要とされています。

帰宅困難者への具体的な対応として、本社ビル内に帰宅困難者用の待機スペースを確保し、3日分の食料、飲料水、簡易トイレ、毛布などの備蓄が挙げられます。また、従業員の居住地マップを作成し、帰宅可能距離や経路上の危険箇所を確認する、一斉帰宅抑制の基準を定め、従業員には携帯用防災セットの常備を義務付けるなどで、より実効性のある帰宅困難者対策を実現できるでしょう。

10.安否確認の仕組み作り

大規模災害時は通信網が混雑して連絡が取りづらくなり、社員の安否確認が困難になります。事業継続の観点からも、迅速な安否確認社員・家族の状況把握は企業の重要な責務です。

対策として、災害用伝言ダイヤル(171)、安否確認専用アプリ、SNSなど、複数の連絡手段の用意が挙げられます。安否情報を一元管理するシステムも導入し、社員の居住地や家族構成などの情報をデータベース化しましょう。これらのツールを効果的に活用するため、毎月の訓練日に全社員が実際に安否確認ツールを使用し、家族を含めた連絡体制の実効性を高められます。

11.地域との連携強化

大規模災害時は公的機関による支援が不足し、地域全体での助け合いが不可欠となります。特に企業は人員や設備、スペースなどの経営資源を活用した地域支援が期待されており、平常時からの関係構築が重要です。

地域防災協議会への積極的な参加や、近隣企業との災害時応援協定の締結、災害時には事業所の一部を避難所として提供、備蓄品や非常用発電機などの防災設備も地域で共有できる体制を整えるなどを、地位との強固な連携体制を構築していきましょう。また、月1回の地域合同防災訓練への参加や防災マップの作成支援を通じて、より実効性の高い地域連携を実現することなども、重要な取り組みとなるでしょう。

防災対策は取り入れられるところからすぐに実施しましょう。

自治体や企業、病院、銀行などの具体的な防災対策事例を紹介しました。これらの事例から、防災対策には「平常時からの準備」「災害時の実効性」の両面が重要であることが分かります。

防災対策の基本として、まずはIT機器の転倒防止やデータバックアップ、避難経路の確保など、すぐに実施できる対策から始めることが大切です。その上で、非常用発電設備の導入や備蓄品の確保、社内の防災体制の構築へと段階的に取り組みを進めていきましょう。